4.6. 内膜系 : 細胞内でつくられた物質の加工と配送
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真核細胞の細胞質は細胞小器官の膜で区画化されている
いくつかの細胞小器官は直接に、あるいは小胞のやりとりによってつながっている
これらの細胞小器官は全体として内膜系 endomembrane systemを形成している
核膜、小胞体、ゴルジ装置、リソソーム、液胞が含まれる
小胞体
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小胞体(エンドプラズミック レティキュラム) endoplasmic reticulum (ER)
細胞の中の主要な工場設備の一つ
きわめて多様な分子がつくられる
小胞体は核膜とつながっているが、また、細胞質全体に張り巡らされた管と袋からなる迷宮のよう
小胞体膜によって、その内部の区画は周囲の細胞質の溶液から隔てられている
小胞体には、粗面小胞体と滑面小胞体という2つの構成要素がある
これら2つのタイプの小胞体は物理的につながってはいるが、それらの構造と機能は異なる
粗面小胞体
粗面小胞体 rough ER(rER)
「粗面」はこの細胞小器官の電子顕微鏡写真の像に関係がある
小胞体膜の外側表面にリボソームが散財しているから
これらのリボソームによって膜タンパク質や分泌タンパク質がつくられる
新しくつくられた膜タンパク質のあるものは、その粗面小胞体膜自身に組み込まれる
したがって、粗面小胞体の1つの機能は新しい膜を作ること
訳注: 実際は、新規に膜がつくられるのではなく、既存の小胞体膜にタンパク質を組み込んで膜を成長させる
分泌タンパク質は細胞の外の溶液中に輸出(分泌)されるタンパク質
口腔に酸素を分泌する唾液腺の細胞などの大量のタンパク質を分泌する細胞には、粗面小胞体が特に多い
粗面小胞体でつくられた産物のあるものは、粗面小胞体から出芽して生じた輸送小胞 transport vesicleという膜小胞によって細胞内の別の部位に搬送される
滑面小胞体
滑面小胞体 smooth ER (sER)
「滑面」は、この細胞小器官には粗面小胞体に見られるリボソームがないから
滑面小胞体の膜に組み込まれたさまざまな酵素群によってこの細胞小器官は多くの機能を果たす
ステロイドなどの脂質の合成
たとえば、性ホルモンのステロイドを合成する卵巣や精巣の細胞には滑面小胞体が多い
肝臓の細胞では滑面小胞体の酵素が、バルビタールのようなよく出回っている鎮痛剤やアンフェタミンのような覚醒剤、そしていくつかの抗生物質を解毒する
抗生物質が感染と戦った後、血流に残っていないのはこのため
肝細胞が薬剤にさらされると、滑面小胞体とその解毒酵素の量が増える
これによって、人体の薬剤に対する耐性を強めることになり、その後は期待する効果を得るためにはより多量の薬剤が必要になる
さらに薬剤に対する耐性が強くなっているということは、薬物依存の証の1つ
ゴルジ装置
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ゴルジ装置 Golgi apparatus
発見者のイタリアの科学者カミッロ・ゴルジ Camillo Golgiにちなむ
ゴルジ装置は精製所であり、倉庫であり配送センター
ゴルジ装置は小胞体と緊密に協調して働きながら、細胞のさまざまな合成産物を受け取り、精製し、保管し、配送する
小胞体でつくられた産物は輸送小胞によってゴルジ装置に到達する
ゴルジ装置の積層部の一方の側は輸送小胞を受け取る船着き場を提供している
ゴルジ装置の積層部の搬出側は、完成した産物が輸送小胞に積み込まれて他の細胞小器官や細胞膜へと向かう場所
細胞膜に結合した小胞はタンパク質を細胞膜に渡したり、細胞の外に最終産物を分泌する
小胞体の産物は通常、ゴルジ装置の受け取り側から搬出側へ移行する間に酵素によって修飾を受ける
たとえば、リン酸基のような、荷札になる分子がさまざまな産物に付加されて、目印をつけられ、それぞれの終着部位ごとに選別される
リソソーム
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リソソーム lysosome
動物細胞に見られる分解酵素を含む膜の袋
リソソームはほとんどの植物細胞にはない
リソソームはゴルジ装置から出芽で生じた小胞から発達する
リソソーム内の酵素はタンパク質、多糖類、脂肪、核酸のような大きな分子を分解できる
リソソームは1つの区画になっているので、その分解酵素が細胞自身に働くことなう、これらの分子を安全に消化することができる
リソソームにはいくつかのタイプの分解機能がある
取り込んだ物体を消化する
多くの細胞は食胞 food vacuoleとよばれる細胞質の小さな袋に栄養物を取り込む
リソソームは食胞と融合して栄養物を消化する酵素に触れさせる
この消化で生じたアミノ酸などの小分子はリソソームから出て細胞の栄養分になる
有害な細菌を死滅させる働きもある
我々の白血球細胞は細菌を食胞に取り込み、その食胞に注入されたリソソームの酵素が細菌の細胞壁を壊す
損傷した細胞小器官の大きな分子を分解する
細胞に害を与えることなく、リソソームは他の細胞小器官を取り込み、消化する
そうして分解産物の分子は新たな細胞小器官の形成に利用される
胚の発生において「彫刻」のような機能も持っている
ヒトの初期胚では、リソソームは酵素を放出して発生中の手指の間の水かき状の部分を消化する
細胞機能とヒトの健康に対するリソソームの重要性はリソソーム蓄積症とよばれる遺伝的疾患によって明白
正常なリソソームに見られる酵素の1つまたはそれ以上を欠いている
異常なリソソームは消化できない物質で膨満し、ゆくゆくは細胞の他の機能も妨害することになる
これらの疾病はほとんどが幼児期において致死
テイ・サックス病においては、リソソームは脂質分解酵素を欠いている
結果として、神経細胞が脂質を過剰に蓄積し、そのために神経系が破壊される
幸いなことに、蓄積症はまれな病気
液胞
液胞 vacuole
小胞体、ゴルジ装置、あるいは細胞膜から出芽で生じる膜の袋
液胞はさまざまなサイズになり、機能も多様になる
食胞は細胞膜から出芽で生じる
ある淡水性の原生生物は、細胞内に過剰に流入した水を外の環境に汲み出すための収縮胞をもっている
別のタイプの液胞に置いては、十分成長した植物細胞の体積の半分以上を占める細胞中央の液胞 central cvacuoleがある
植物細胞の中央の液胞は多くの機能をもつ区画
たとえば、種子の細胞の液胞がタンパク質を貯蔵するように、有機栄養物を蓄える
また、吸水によって細胞を増大させ、それによって植物の成長に寄与している
花弁の細胞では、中央の液胞に受粉を媒介する昆虫を誘引する色素を含んでいるものもあるだろう
植物を食べる動物から保護するための毒物を含んでいるものもある
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内膜系の細胞小器官が互いにどのような関係にあるのかを概観
内膜系のある部位での産物が、膜を通過しないで細胞の外に出たり、別の細胞の小器官の部分になったりすることに気づいて欲しい
また、小胞体によって作られた膜が、輸送小胞の融合を介して細胞膜の一部になりうることにも気づいて欲しい
細胞膜も内膜系とつながりのある膜
→4.7. 葉緑体とミトコンドリア : エネルギー変換